ラビは、男がこちらに背を向けているのをいい事に、ノエルと一緒に料理を食べ進めた。自分の口に食べ物を入れた後、咀嚼している間に、口を開けたノエルの方にも入れてやる。

 メイン料理となっている鳥肉は、油が乗ってとても美味しかった。噛んだ際に口の中に溢れる肉汁は、臭みを取るために詰められた香辛料の匂いも良くて、つい唇に付いた油とタレを舐め取ってしまう。

『この野菜料理も美味いな。バターみたいに柔らかいやつも、癖がない』
「なんの野菜なんだろうね、もしかしたらフルーツの一種なのかな?」
『フルーツってよりは、サラダでもイケる感じだな』

 ノエルは最後の一口を食べ終わると、自称グルメらしい台詞を口にして、満足そうに胸を張った。

 空になった大皿をカウンター上の配膳棚に置くと、男がこちらと皿に視線を往復させて、もう食ったのかと言わんばかりに目を丸くした。ラビが礼が言いたくて、チラリと目を合わせた。

「美味しかったです、ありがとう」