ヴァンの話の中には、セドリックがすっかり寝てしまっているという情報は含まれていなかった。説教モードに入られたらたまらない、と言っていたくらいだから、多分彼がいる時は起きていたのだろうとは思うのだ。

 ノエルも同じ事を考えていたようで、『直前までは意識もあったとは思うんだが』と、自信がなさそうに語尾を弱めた。

『酒が弱いとはいえ、聞いた話の情報が少な過ぎてなんとも言えねぇな』
「セドリックって、外であんまり眠りこけた事もないから、なんだか変な感じ」

 彼が騎士学校に行ってしまう前までは、一緒に過ごす事もたびたびあった。木の下で涼んでいた際も、うっかり眠ってしまうのはいつも自分の方で、セドリックは隣でじっと本を読んでいたのを覚えている。

「さすがに、オレがセドリックを運ぶのは無理だし。自分の足で部屋に行ってもらわないといけないんだけど」

 眠ったばかりなら難しいかな、とラビは眼差しでノエルに問い掛けた。彼は、想像力を働かせるように頭を右へと傾げて、『少し寝ればどうにかなるんじゃね?』と簡単に考えて言った。