改めて食堂内を見回してみたところで、カウンター席の奥の方に、見慣れた蒼灰色の綺麗な髪が目に留まった。騎士服をローブで隠したセドリックが、うつらうつらと頭を揺らして腰かけている。

 カウンターにいた薄着の大きな中年男が、こちらを見て、ああ来たかというような安堵と戸惑いの表情を見せた。恐らく金髪の獣師が共に宿泊する旨を聞かされていたか、彼らと似た衣装とローブに身を包んでいる事もあって、すぐに連れだと分かったのだろう。

 他の少ない客達が、こちらを盗み見ながら、何食わぬ顔でそろりと席を立っていくのが見えた。迷信を恐れているタイプなのだろう。露骨に嫌悪感を出した態度を取らないところを見ると、大人しい客達ばかりなのかもしれない。

 セドリックは座ったまま眠っているようなので、その間に少しでもアルコールが抜けてくれる事も期待して、ラビは先に腹ごしらえを済ませる事にした。先程の窓口の少年の事を考えると、もしかしたら食事に関しても、自分が最後の客である可能性もあると思ったからだ。