「さぁな。ユリシス様もあまり飲まない人なんだが、上司に付き合うって言って、珍しくビールをジョッキ一杯分は飲んだな」

 ヴァンは思い返しながら説明し、「やれやれ」と首の後ろを撫でさすった。

「ああ見えて、テトとジンは騒ぎ癖もある後輩だからな。サーバルだけで面倒を見るってのも手に余るだろうし、だから幼馴染の副団長の事は任せたぜ、チビ獣師」

 それに多分、外にいるよりはずっと安全だろう――

 視線をそらされた際、そんな呟きが聞こえたような気がして、ラビは踵を返したヴァンの背中に向かって「何が?」と尋ね返した。しかし、彼は「なんでもねぇよ」と言って、後ろ手を振って歩いて行ってしまった。

             ※※※

 宿の一階部分の、扉が設置されていない大きな入口をくぐると、見通せる程度の大きさをした開けた食堂があった。旅の道中の団体客の利用が多いのか、木材質の大きめの円系テーブル席には、入れる分だけたっぷりに椅子が収まっている。