あの仕事に口煩いユリシスが就寝し、テト達が外に飲みに行ったという事は、勤務時間外なのだろう。それなのに、部下として仕事でわざわざ一緒にいたのだというようなヴァンの台詞には、疑問を覚えてしまう。

 それについてラビが問い掛けようとした時、視線を斜め下方向にそらしていた彼が、悩ましげにこう言った。

「正直言うと、逃げたい」
「はぁ?」

 一体唐突になんだ、とラビは露骨に顔を顰めた。

 お前結構隠さないし色々と失礼だよな、とヴァンは自分よりも随分小さな彼女へ視線を戻した。

「俺はな、第三騎士団で一番怒らせたくない相手が、副団長なんだよ。あの人は切れるとおっかねぇ。強く酔っている時は、へたするとプツリと切れて日頃のあれやこれやを説教される率がぐんと上がる」

 真面目な顔で、ヴァンがそう言い切った。

 ラビは、幼馴染のセドリックが、どれほど温厚気質であるか知っていた。だから、真面目に聞いて損した、と言わんばかりの表情を浮かべて腰に片手をあてる。