「ユリシス様は就寝が早いからな、さっさと食って部屋に上がっていった。テトとジンが外に飲みに繰り出して、ハメを外し過ぎないようサーバルが同行した」
「それって夜更かしじゃん。眼鏡が知ったら怒りそうだな」

 眼鏡と言われた一瞬、ヴァンは「呼び名が『眼鏡』か……」と遠い目をしたが、気を取り直すように固い癖毛の髪を後ろへ撫でつけた。

「あいつらは酒が強いからな。寝坊さえしなけりゃ、ユリシス様も何も言わねぇよ」
「ふうん? あんたも、サーバルさんって人といつも一緒なのに、別行動なのも珍しい気がする」
「お前、サーバルの名前はちゃんと呼ぶんだな、しかも『さん付け』……。俺だって外に出る予定だったんだが、副団長のお守で――」

 そこで、ヴァンは唐突に思い出したかのように言葉を切り、「そうだった、忘れてたけど、俺がユリシス様の代わりに付いてたんだよなぁ……」と深い溜息をこぼした。
 彼は幼馴染のセドリックを、副団長と呼ぶ。つまり他の騎士のメンバーが退出した中で、セドリックだけが食堂に残っている状況であるらしい、とラビは察した。