「食堂は禁煙だったのか?」
「まぁ、そんなところだ」

 そう言って、ヴァンは短くなった煙草の吸殻を、木箱の隣に設けられていた灰皿に押し潰した。さっきサーバルに言われて、女の子だしなと思い出して待ってしまった訳だが、とラビに聞こえない声量で口の中に独り言をこぼして立ち上がる。

 目の前に立たれると、幼馴染のセドリックよりも大きな男である事がよく分かった。ラビが、騎士も軍人なんだよなぁと考えていると、こちらを数秒ほど見下ろしていたヴァンが、ふと口を開いた。

「お前は、強いな」

 言われた意味がよく分からなくて、ラビは首を傾げた。

「剣と体術にはそれなりに自信はあるけど」
「そっちじゃねぇんだが。いや、強くあろうとしているだけか――『相棒』もそこにいんのか?」

 建物の出入り口から、馴染みのない民族衣装で身を包んだ三人の男性が出てきたので、ラビは口頭では答えず、ここにいるよと教えるようにノエルの背を少し撫でた。