鳥に食べ物の礼を改めて告げた後、ラビはノエルと共にアビードの町に戻った。ごちゃごちゃとした印象のある建物や雑貨といったものを広げて販売している屋台やテント店は、街灯だけでなく吊り下げ式の灯りも沢山付けられていて、まるで祭りのような眩しさで町を照らしていた。

 その橙色の明かりは、帽子から覗く金髪をあまり目立たせないでいてくれていて、ラビは人混みに紛れるように帽子を深くかぶり、足早に中心地まで歩き進んだ。
 一階に食堂が付いているという時計が設置された宿を目指していると、しばらくもしないうちに一際背の高い建物が見えてきた。

「あれかな?」

 思わず呟くと、日中よりも距離が近い通行人を忌々しげに避けていたノエルが、彼女が見ている先と同じ方向に顔を向けた。

『こっからだと、時計が付いているのかまでは確認出来ねぇなぁ』
「ノエル、大丈夫? すごく歩きづらそうだけど、先に行く?」
『……先には行かねぇ』

 ノエルはそう答え、ラビから離れないよう人混みを縫うように歩いた。