『この町の犬や鼠とは友達でね。ちょっとした物くらいであれば、彼らの同居人からもらえたりするのさ』

 同居人――それは共に暮らしている人間や、世話になっている人間だという。

 渡された白い布の袋には、暖かいパンにコロッケが挟まれた、質素ながら食欲をそそるサンドイッチが二個入っていた。丁寧に紙袋で包装されているのを見る限り、どこかの店の商品といったところである。

 思わず、ノエルとまじまじと見つめてしまうと、察したように鳥が笑って、まるで人間のようにドカリと腰を降ろして胡坐をかいた。

『確かにアビードの町は、ひどい砂風が吹くから食べ物の屋台はないさ。けれどね、建物の店の中にはちゃんと、小さなスペースを設けて販売されているんだよ』
『なるほどな。食事処でも、持ち帰りの商品の提供も可能ってわけか』
『そうそう、通りがてら食料と水を調達して、そのままアビードを通過する人間達もいるからね。飲食の屋台はほとんどが共同経営って感じで、それぞれの店に組み込まれているってわけさ』