「そこにノエルがいるんですか?」
「うん、オレの隣にいるよ」

 ラビは肩越しに振り返り、親友がいる場所を指差した。ついでに、その大きな頭をぐしゃぐしゃと撫でると、ノエルがまんざらでもなさそうに『ふふん』っと胸を張った。

 まるで何かを撫でるようなラビの指先へ、セドリックは目を向けた。彼の隣にいたユリシスも、そこに何かがいるのかじっくり探すように目を留めたが、少しもしないうちに美麗な顔を顰めた。

「あれだけ食べる大型獣だというのに、影一つないとは不思議なものです。足跡も残らないですし」
『足跡は残さないようにしてんだよ』

 大食らいという自覚があるノエルが、相手が見えないと知りつつも舌打ちして言い返した。それを見たラビは、通訳してやろうと思って、ユリシスへ視線を移した。

「ノエルが、足跡は残さないようにしてるんだって言ってる」

 伝えるだけなので、ラビは意識もせずそう言った。