お前の親父も所構わず、ぎゅっとしていいかって尋ねてたよな、とノエルは落ち着かせるように話した。ラビは「そんな事あったっけ」と、彼の首に顔を押し当てる。
 頭上をチラリと見て、ノエルはこう呟いた。

『お前って、昔から寂しがり屋だったもんなぁ』

 だから、拒絶される事に対して、そのたび傷ついた。慣れる事なんてずっとなかった。多分、人が恋しい気持ちを捨てられずにいるのだろう。昔はよく泣く子だった――と、そんな事を思い返して口の中に思案を落としてしまう。

 その直後、ノエルは回想を止めてピクリと硬直した。しんみりと抱き締めるラビが、そのまま器用にも、長さのある彼の耳をふにふにと触り出したからだ。

『…………お前、ほんと俺の耳好きだよな』

 妖獣にとっては弱いところだ。身体の中で一番くすぐったいので勘弁して欲しいのだが……と、ノエルは思わず普段の乱暴さもなくなった口調で、困ったようにそう呟いてしまった。