髪が長い時、いつもやっていたリボンを、彼女はどうしたのだろう。

 似合うなぁ、可愛いなぁ、とこっそりいつも見ていて、空色のリボンも似合うのではないだろうかと、そんな事を自分は思っ――

 その時、元気な老婆の声が聞こえて、セドリックとヴァンは揃ってビクリとした。うっかり真面目に話してしまっていたと気付いて、見も知らぬ他人に聞かれたのかとギクリとして、セドリックは声の聞こえた方へ目を走らせた。

「こんにちは、あんたらが『騎士様』かい?」

 そこには、一人の小さな老婆が立っていた。彼女は役場の出入り口から外に踏み出したところで足を止めているので、恐らくは用事を済ませて出て来たところなのだろう。
 ヴァンは老体に障るだろうと、咄嗟に短くなった煙草の火を消して、持ち歩いているケースに吸い殻を押し込んだ。それを見た老婆が、どこか楽しそうに笑った。

「あんた、見た目は怖いけど、随分優しい人なんだねぇ。騎士ってのは、ふてぶてしいやつが多いイメージがあったけど見直したよ」