その金色の瞳を持った子供は喜怒哀楽を持たず、まるで中身が大人のようで異様だったという。村内で不穏な事が起こった時、必ず近くに現れてはじっと見つめている姿が目撃され、最後はふらりといなくなってしまったのだとか。

 話を聞いたヴァンが、「ホラーな三流劇みてぇだな」と口角を引き攣らせた。

「全員死んだってんなら、その話が残るというのも変な感じがしますがね」
「かなり古い文献なので、通りがてらの旅人が記録を取ったのかさえ不明です。別の本では、その子供が『悪魔そのものだったのではないか』と憶測されている話も、少なからず残ってはいるそうです」

 信仰心が強いこの国では、残されている伝説や迷信を信じている人も多く、物心付いた頃から震え上がるようなお伽噺を誰もが聞かされて育つため、血生臭い文献まで残されていては、もし金髪や金目が目の前に現れたとしたら、恐れてしまうだろう。

 早く眠らないと金色の災厄がくるかもしれませんよ、というのも、親が眠らない幼い我が子に聞かせる台詞としても定着していた。