「遠い言い回しで記述されている程度で、それが人間であると記述されているわけではなんだ」
「ははぁ、なるほど。そりゃ、どこか悪意も感じる狡賢いやり方っすね」

 人の姿をしても悪魔は金の瞳を隠せない、神の子は悪魔と戦ったのだ、というような内容が聖書には示されていた。それに加えて、昔から『悪魔の色』として語り継がれてる話も多く存在するため、人々の抵抗意識は強い。

 災いが起こる前触れである。不幸を招く。同胞だと思った悪魔が迎えにくる、だから巻き添えで周りのモノ全てが地獄に引き落とされるのだ、と。

「――昔、そういった話を、兄が調べていた事があったんです」

 副団長としてではなく、セドリックは一人の青年としてそう呟いた。ヴァンが横目でこちらを見て「へぇ?」と好奇心が滲む声で話の先を促す。

「別邸には古い本も沢山あって、その中の一つは体験記だったのですが、昔ある地方の村に金色の瞳の子供が生まれ疫病が起こったそうです。気が触れる者が出て一晩の間に村人が惨殺され、最後は全員死んでしまった――という話だったのを覚えています」