可愛らしい、という言葉で片付けられない凶暴さは本物だが、氷狼の事件の際に、一人で突っ込んでいくような危うさがあるとも感じた。目を離すと勝手に飛び出して、へたをすれば大怪我をしかねない。それもあって、なんとなく小さな獣師を放っておけなくなっていた。

 金髪金目を見たのはラビが初めてで、迷信を信じた事はなかったものの、ついまじまじと見てしまった。純粋なテトが「すごく綺麗だよな」と瞳を輝かせて語っていたのには、ヴァンとしても賛同も出来た。

 珍しい毛色ではあるが、それが悪いとは思えない。

「昔話に結構書かれてるって事は、大昔は金髪の人種もチラホラいたんじゃね?」

 大陸繋がりの隣国にも、金髪や金目の人種がいないので、その辺はなんとも言えないが。もしかしたら、ずっと向こうの海を渡った先の大陸には、当たり前のように存在しているのではないだろうか?

 そう考えながら大きく煙を吐き出したヴァンは、不意にギクリと指先を強張らせた。距離がある位置から、ユリシスの背中を刺すぐらいに突き刺してくる強烈な無言の一睨みを覚えた。

 ヴァンは思案をやめ、何食わぬ顔でそっと煙草の火を消した。