他力本願なんて考えた事はないし、今のところセドリック達がどうしているのか、といった些細な事も眼中になかった。

 財布を盗られたうえ、二度にわたって逃げられたのである。しかも、チビだの悪魔だの凶暴だの文句まで言われたのだ。説教も文句もたんまりあった。

 まずは、自分の手でボコボコにする。

 ラビは、愛らしい顔で物騒な思考をして拳を固めた。そのためには、やはりノエルが提案してくれた、二手に別れて捜索する方がいいだろう。もしかしたら奴らは町を出るため、外に向かってずっと走り続けているかもしれないし――


 その時、先程聞いた声が耳に入って、ラビとノエルは同時に足を止めた。
 がやがやと賑わう人通りの中、まさか、いや気のせいかもしれない、という心情でゆっくりと同じ方向に顔を向ける。


 視線の先にあったのは、珍しく出店も並んでいない細い通りだった。どうやら並んでいる建物は、住居用のアパートメントであるらしい。小さな窓には植木鉢や鮮やかな色合いのカーテンが覗き、玄関先には少しお洒落な呼び鈴が設置されていて生活感が漂っていた。