次の商品を投げつけられる前にと、一番背の高い先頭の男が仲間の二人に合図し、テント店と屋台が統一感なく建ち並ぶ細い通りに入った。

 ラビが「逃がすか!」とその通りに滑りこんだ瞬間、男の一人が道を塞ぐように屋台の柱を蹴り折った。屋台の屋根が、隣のテントの出店を巻き込んで崩れ落ち、商品がぶちまけられる。

 店主とそこに居合わせた人々の悲鳴が上がり、砂埃が舞って視界が遮られた。舌打ちしつつも、ラビは足を止めず地面に転がった障害物を飛び越えた。ノエルが後に続き、その大きな獣の身体と尾に触れた屋根の一部と商品が弾かれて、人々と周囲の店や壁に当たりより騒ぎが大きくなった。

 砂埃で視界が悪い。小さく咳込みながら、早く悪い視界位置から脱しようと意識して走ったものの、そこを抜けた時、追い駆けていた三人の男の姿をすっかり見失っていた。
 またしても逃げられたのだ。その現状を察した瞬間、ラビはピキリと青筋を浮かべた。その隣で、ノエルがチラリと後方の様子を窺う。