見えない黒大狼がどこかにいるだろう想像を働かせていたヴァンが、ラビがふんっと顔をそむけたタイミングで「おい、野郎共」とこっそり呼んだ。彼らは顔を寄せて、どうしたもんかという表情で見つめ合う。

「あのチビ、これ以上大きくなると思うか?」
「正直言って、俺も予想がつかないでいるんだよね……」
「サーバル先輩もそう思う? 俺もさ、幼馴染に小さい女の子がいるから、そのへんはちょっとどうかなって思うんだよなぁ」
「つか、あのチビが女だとか信じられねぇよ…………」

 小さい軍服のサイズがぴったりで、まるで十四、五歳くらいの子供みたいだとうっかり笑ってしまったら、またしても飛び蹴りが飛んできたのだ。しかも、顎一直線で狙ってきた。

 思わず痛みを思い出して涙目で本音を吐露するジンを見て、一同が憐れみの視線を送った。王宮の建物に入ったら煙草が吸えないので、今のうちにと一本を咥えたヴァンが、火を付けながらしみじみ頷く。

「俺も性別を忘れるな」