乾いた大地にポッカリと建つ大きな町には、夕刻に差し掛かるよりも前の時間に到着できた。名をアビードと言い、近くの村々や旅商人が休憩所として起こした商業の街である。

「……なんだか、お祭りみたいな雰囲気だなぁ」

 アビードの町に降り立って早々、ラビは正直な感想を口にした。ほとんど商業で集まっているせいか、道端には所狭しとテントが張られた店が立ち並び、店を目立たせるために見慣れない形の飾りも色取り取りにされていた。土産品だけでなく、売られているフルーツや野菜も色鮮やかである。
 
 質素で古い作りの建物同士の間には、長いロープがピンと張られ、生活感溢れる洗濯物が乾燥した風に揺れていた。この辺りの村々は民族衣装が多種で異なっているのか、衣装も様々で、目立つ色と柄の布を頭や身体に巻き付けている人々の姿が目立った。

 軍服が目立つといけないからと、ラビ達は馬車を降りる際に旅用のローブで身を包んでいた。団体や複数人で出歩いているグループが圧倒的に多く、大人数を疑われている様子もない。