走り出した馬車は、騎士団の速馬よりもやや荒く急かすように走った。しばらくもしないうちに乾燥地帯に突入し、何も無い土色の大地を猛スピードで進んだ。

 この辺りは雨が少なく、乾いた硬い土は植物が育たない特徴を持っているらしい。夜になると、日中岩陰に隠れている害獣が活動するため、馬車も日中内に中継地点になる町を目指すのだという。

 実は馬車に乗り込む際、セドリックやユリシスに話を聞かされるよりも前に、ラビは今回の短い旅のお世話になる馬達にそう教えられていた。言葉はつたなかったが、若々しく勇敢でたくましく『ぶっ飛ばして行くんで任せてください』と彼らは茶色い身体を誇らしげにして嘶いた。

 ケイラー地方は土地の四割が乾いた大地、残り六割が土壌に恵まれて緑豊かである。土地の表情の変化が激しく、ごつごつとした岩や石が転がる殺風景な大地に、唐突に水源を持った森が現れたりする。

 その箇所は雨雲が発生し、多く雨が降る特色もあった。こちらから見ると一部だけに雨が降っているという、珍しい様子も肉眼で確認する事が出来て、ラビは車窓からそれをまじまじと見つめたりした。