「騎士団のものとは違いますから、それなりに揺れもあると思います……『彼』は大丈夫でしょうか?」

 馬車に乗り込む直前、改めて全員で予定を確認したところで、男たちがラビの方を見た。
 早朝とはいえ、王都の通りには既に人の往来が多くあった。彼らはハッキリとしたことは言わず、さりげない仕草で、見えない黒大狼がいるんじゃなかろうかという目を彼女の足元に向けてくる。

 ラビは、彼らがノエルに気を遣ってくれている様子に、うっかり感動した。今は姿も見えないのに、一時的に見えていた時と変わらず、こうして親友の存在を意識してくれていると思える台詞も、くすぐったいほどに嬉しい。

 彼らには見えなくとも、ノエルはここにいる。だって、自分の目には確かに映っているんだもの。

『存在が認知されているってのも、なんか妙な感じだなぁ』
「オレは嬉しい」
『口を押さえるのが少し遅かったな、ラビ。心の声がまんま出ちまってるぜ。あいつらには俺の声は聞こえてねぇんだから、不審に思われ――って、また何か話してるなって顔だな、あいつら』