彼女の寝顔を、何度か見掛けた事があった。

 疲れたように木陰に腰を下ろして、春風が優しく吹き抜ける中、心地良さそうに眠っていた。その顔から幼さが抜け始めていると気付いてからは、見掛けるたびじっと目に留めるようになった。


 触れてみたいな、と思った。

 ふっくらとした小さな血色のいい唇や、金色の髪が掛かる白い頬に目が吸い寄せられた。そこに男として触れたいという欲を覚えるたび、四歳違いで先に大人になってしまった自分を思って頭を抱えた。


 当時セドリックは、好奇心旺盛な十七歳。ラビはまだ十三歳だった。
 だから、そんな事を考えてはいけないと思った。

 一年ほどタイミングが合わず、十六歳の彼女の姿を見掛ける事はなかった。だから十七歳になった彼女を見た時は、小奇麗さに磨きがかかっていてドキリとした。やはりどう頑張っても少年には見えないし、リラックスして微笑む横顔は、数年先の大人の彼女を想像させた。