すると、それを表情から察した彼が『妖獣師が存在していた記録は残っていねぇんだ。歴史的に価値があるかと言われても、俺には分からねぇよ』と言って、こう続けた。

『簡単に言っちまえば『遺跡の宝』には、本物の、最高純度の宝石がはめられているって事さ」

 宝石と聞いた瞬間、ラビは「え」と声を上げてしまった。

「待って待って、術具に宝石を使うの?」
『元々、大地で長い年月をかけて自然に産み出される宝石は、魔力を貯め込みやすい性質なんだよ。俺の知っている妖獣師が身に付けていた首飾りだって、現在の価値に換算しても、城一つが簡単に買えちまうくらいの価値がある」
「お城!?」

 ラビは、思わず叫んでしまった。

 首飾り一つで城が買えてしまうなんて、本当にあるのだろうか?

『落ち着けって。今と違って、当時の連中は宝石を金銭価値では見ていなかった。術具に含まれる魔力が強いほど、それを扱える妖獣師も限られるから、制御出来ない妖獣師や一般人からしたら災いや呪いの産物みてぇに『どうぞどうぞ持っていって下さい』ってな感じでもあった』