その一連の流れを見ていたケイティが、愛想の良い表情のまま「僕の質問がことごとくなかった事にされているなぁ」と呑気な様子で感想を口にした。ノエルは、あまりにも呆れて前足の一つで顔を押さえていた。

「何かお探しで?」
「えぇと、その、パン屋さんを少し見て回っていたというか……」
『始めから知っていたのにその露骨な質問の仕方とか、こいつら色々とクッソ下手だな!』

 思わずノエルがそばで吠え、ツッコミたくてたまらんっ、と前足で地面を数回踏みつけた。

 その声を聞いたラビは訝ったものの、男達が真っ直ぐこちらを注視しているから、彼に目で尋ねる事も出来なかった。
 
 その時、ケイティが「なるほどね!」と万事解決とばかりに手を打った。

「なら僕が案内してあげるよ、この辺の店はとても詳しいんだ」
「え」
「大丈夫だよ、任せておいて。僕の友人が経営する店もそうだけど、お得意先はどれも懐が深くて気さくななんだ」

 そう言って慣れたようにウィンクをされ、ラビは数秒遅れて、彼が遠回しに金髪金目を言っているのだと気付いた。二人組の男達も、察したように目を見開く。

 ケイティは、ラビに向かって手を差し出したところで、「あ。言うのが遅れたけれど」と笑顔のまま首を傾げてこう続けた。


「その金髪、とても素敵だね。ようこそ王都へ。君の名前を訊いてもいいかな?」


 どこまでも自分ペースのようなケイティを見て、ラビ達は少しの間、呆気にとられてしまった。