向こうも私に気づいて、にこりと会釈してくれた。今日は、かごいっぱいにお肉を買っている。鶏肉、特売なのね。
こないだはキャベツを3玉買ってたし、一体何人家族なんだろう。
想像している自分に気づいて、誰ともなく照れる。
やだ、これじゃ私、ストーカーみたい。
特売の鶏肉を私も買って、レジに向かう。人も多いからレジも混んでいたけど、ひとつだけ列の短いレジがあった。
不思議に思いながらそこに並んで気づいた。レジのところについている若葉マーク。
ああ、研修中の方なのね。急いでいる人は、ベテランさんのとこに並んでいるのか。
私は急いでもいないので、のんびりとそこで順番を待つ。
見るともなしにレジの人に視線を向ける。私と同じ歳くらいの、若い女性だった。
新人さんかあ。いつから入ったのかわからないけれど、私と一緒だね。
心の中で知らない彼女にエールを送っていると、私の前の人の順番になった。
中年の男性だった。待たされてイライラしているらしく、乱暴にかごを置く。
「お待たせいたしました」
疲れているだろうにそう言ってくれるレジのお姉さん、笑顔がかわいい。
「さんざん待ったぜ。とっととしろよ」
中年の男性が乱暴な調子で言った。びくり、とレジの人が肩を揺らす。おびえてしまったのか、何度も打ち間違いをしていた。
「段取り悪いなあ、おい。へたくそ。とろとろしてんなよ」
大きな声ではないから、どうやら他の店の人は気づかないみたい。でも、ねちねちと絶えず続く文句に、レジの人の手が震えているのが見えた。
ああ、あんなふうに言われたら怖いよね。
その様子をはらはらしながら見ていると、中年の暴言に耐えられなくなったのか、レジの女性がぽろりと涙をこぼした。
「そ、そんなに言わないでください」
私は、ついにがまんできずにその中年に言った。
「ああ? なんだって?」
ぎろりとこっちを睨む。
う、足がすくむ。でも、もう見ていられない。
「まだ、慣れてないってここに書いてあるじゃないですか。お急ぎかもしれないですけど、せめて終わるまで黙っていてあげてください」
「なんだよ、お前。文句あんのかぁ? ああ?」
中年がこっちに近づく。ぎゅ、と自分の手を握りしめたときだった。
「お静かに願います。他のお客様にご迷惑です」
私の前に誰かが立った。その人の背中で、中年の姿が見えなくなる。
「乱暴な言葉は慎んでください」
あ……
「どうかしましたか」
そこへ、スーパーの店長が走ってきた。
中年の男性は急におとなしくなって、別にとかもごもご言いながら、それ以降は何も言わずに会計を済ませた。
「大丈夫?」
割って入ってくれたのは、しらすさんだった。
「あ、ありがとうございます」
しらすさんはいつものようににこりと笑うと、列の後ろの方へ戻っていった。
「ありがとうございました」
買い物かごを置くと、レジのお姉さんんが私に頭を下げる。
「とんでもない。ごめんなさい、何もできなくて」
「いいえ。とても、心強かったです」
私の買い物をレジに通す時には、その人の手はもう震えてなかった。
「気にしないでね。たまにはああいう人もいるみたいだから」
「そうですね……がんばります」
丁寧にお礼を言う彼女に私も笑みを返して、サッカー台に移る。あの中年男性は、とっくにいなくなっていた。
「すみません、お客様」
声をかけられて振り向くと、困ったような顔をした店長さんだった。
こないだはキャベツを3玉買ってたし、一体何人家族なんだろう。
想像している自分に気づいて、誰ともなく照れる。
やだ、これじゃ私、ストーカーみたい。
特売の鶏肉を私も買って、レジに向かう。人も多いからレジも混んでいたけど、ひとつだけ列の短いレジがあった。
不思議に思いながらそこに並んで気づいた。レジのところについている若葉マーク。
ああ、研修中の方なのね。急いでいる人は、ベテランさんのとこに並んでいるのか。
私は急いでもいないので、のんびりとそこで順番を待つ。
見るともなしにレジの人に視線を向ける。私と同じ歳くらいの、若い女性だった。
新人さんかあ。いつから入ったのかわからないけれど、私と一緒だね。
心の中で知らない彼女にエールを送っていると、私の前の人の順番になった。
中年の男性だった。待たされてイライラしているらしく、乱暴にかごを置く。
「お待たせいたしました」
疲れているだろうにそう言ってくれるレジのお姉さん、笑顔がかわいい。
「さんざん待ったぜ。とっととしろよ」
中年の男性が乱暴な調子で言った。びくり、とレジの人が肩を揺らす。おびえてしまったのか、何度も打ち間違いをしていた。
「段取り悪いなあ、おい。へたくそ。とろとろしてんなよ」
大きな声ではないから、どうやら他の店の人は気づかないみたい。でも、ねちねちと絶えず続く文句に、レジの人の手が震えているのが見えた。
ああ、あんなふうに言われたら怖いよね。
その様子をはらはらしながら見ていると、中年の暴言に耐えられなくなったのか、レジの女性がぽろりと涙をこぼした。
「そ、そんなに言わないでください」
私は、ついにがまんできずにその中年に言った。
「ああ? なんだって?」
ぎろりとこっちを睨む。
う、足がすくむ。でも、もう見ていられない。
「まだ、慣れてないってここに書いてあるじゃないですか。お急ぎかもしれないですけど、せめて終わるまで黙っていてあげてください」
「なんだよ、お前。文句あんのかぁ? ああ?」
中年がこっちに近づく。ぎゅ、と自分の手を握りしめたときだった。
「お静かに願います。他のお客様にご迷惑です」
私の前に誰かが立った。その人の背中で、中年の姿が見えなくなる。
「乱暴な言葉は慎んでください」
あ……
「どうかしましたか」
そこへ、スーパーの店長が走ってきた。
中年の男性は急におとなしくなって、別にとかもごもご言いながら、それ以降は何も言わずに会計を済ませた。
「大丈夫?」
割って入ってくれたのは、しらすさんだった。
「あ、ありがとうございます」
しらすさんはいつものようににこりと笑うと、列の後ろの方へ戻っていった。
「ありがとうございました」
買い物かごを置くと、レジのお姉さんんが私に頭を下げる。
「とんでもない。ごめんなさい、何もできなくて」
「いいえ。とても、心強かったです」
私の買い物をレジに通す時には、その人の手はもう震えてなかった。
「気にしないでね。たまにはああいう人もいるみたいだから」
「そうですね……がんばります」
丁寧にお礼を言う彼女に私も笑みを返して、サッカー台に移る。あの中年男性は、とっくにいなくなっていた。
「すみません、お客様」
声をかけられて振り向くと、困ったような顔をした店長さんだった。



