ラビが納得する様子を見て、ノエルは『素直というか、鈍いというか……』と複雑そうに呟いた。うっかり魔力と口にしてしまったのに、そこについて訊いてくる方に思考が働かないのは、少し心配に思った。

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 ラビが、梯子を下りて少し歩いたと先に報告すると、グリセンは書斎机の椅子に座ったまま気絶してしまった。

 持ち前の胃痛と小心のせいかなと察しつつも、ラビは、どうしたらいいのか分からず黙っていた。ユリシスが「数分で起きます」とそっけなく告げて、二人は書斎机の前に立ったまま彼の目覚めを待った。

 二人が見守る中、グリセンは数分後に意識を取り戻した。彼は目覚めてすぐ、もう二度としないように、と震える声で何度もラビに頼み込んだ。

「君に怪我でもされたら僕の責任問題に……いや、恐らく総団長に抹殺される可能性が…………」

 グリセンは、先程まで読んでいたらしい手紙を握りしめ、残った方の手で腹を押さえながらそう呟いた。