「オレ、戻ったらグリセンに、山の方で死んだ人の事を訊いてみるよ。その人が立ち寄った先とかが分かれば、【月の石】の場所が絞り込めるかもしれない」
『じゃあ、その間に、俺は町中を少し回ってくる。今のままだと魔力は探れないが、一ヶ所に集められているとしたら、恐らく近くまで行けば気配ぐらいは辿れるかもしれねぇ』

 ラビは話を聞きながら、後ろ手を組んでノエルに目を向けた。

 何度見ても、彼はちょっと大きい、優雅で贅沢な毛並みを持った狼にしか見えない。特殊な生き物という実感はないが、少し気になった点については、好奇心から尋ねてみる事にした。

「妖獣ってさ、不思議な力があるって言ってたけど、ノエルも魔法が使えるの?」
『……魔法なんて大袈裟なもんは使えねぇよ。満月の夜に、お前を乗せて空を飛んだ事があっただろ。俺が出来るのは、あれぐらいなもんだよ』

 ノエルは歯切れ悪く言うと、一方的に話を終わらせるようにそっぽを向いた。確かに空を飛んだな、とラビは遅れて思い出し、そう考えると、彼が普段から高く飛べるのも、高所からの落下が平気なのも頷けるなと思った。