「……ノエルの説明、ざっくり過ぎない? つまり悪鬼っていうのが原因って事でいいのかな」
『ああ、そうだ。悪鬼のせいで、氷狼の異常行動が発生してるんだろうな。……つか、お前にあんまりこっちの世界の知識を入れたくねぇんだよなぁ』

 ノエルが四肢を立たせたので、ラビも立ち上がった。

 ラビはふと、警備棟の屋上から、三人の男が不思議そうに窺っている事に気付いた。こちらの会話は聞こえていないようだが、一人で何をしているのだろうと、不審がられている可能性はある。

『恐らく聖獣のテリトリーで、人間の血が流れたんだろう。そのせいで場が汚されて悪鬼が沸き出し、たまたま運悪く【月の石】があった……毎回二、三頭って事は、手元にある【月の石】も少ないとは思うが、あいつらもそれなりに考える頭はあるし、まずは数を確保しようと思い立ってんだろうなぁ……』

 考えながら口の中で呟き、ノエルが意味もなく尻尾を回した。

「氷狼のテリトリー内で死んだ人がいて、その人が【月の石】を持っていた。だから悪鬼は、町を狙っているって事でいいのか?」

 ラビが要点を整理しながら尋ねると、ノエルが大きく頷いて『そうだ』と言った。