大地は乾ききっており、最近は雨も降っていないようだ。地面には砂利と、小指ほどの石が転がっているばかりで、雑草の一つも生えてはいなかった。

『やっぱり、匂いが混じってるな……』
「なんの匂い?」
『……考えたくはない可能性だったが、多分これは【悪鬼】だろうなぁ』

 ノエルは十数秒ほど地面の匂いを嗅ぐと、ふと『ラビ、こっちを見てみろ』と声を上げた。

 ラビはしゃがみ込み、ノエルが鼻先で示す場所を確認した。砂利に青い砂が混じっている。それは手で触れるとぼろぼろに崩れてなくなってしまい、指先で持ち上げる事も叶わなかった。

「何これ」
『使用済みの【月の石】だ』

 ノエルは、苦々しい顔で呟いた。

『本来は、月の光の力を閉じ込めた黄色い石なんだけどな。俺達にとって、月の光無しに力を引き出せる魔法の石みたいなもんだ。使って消費されると、青くなる』
「どういう事?」
『あ~……つまり、俺みたいな存在にとって、利用価値のある石なんだよ。普通の人間には見えない俺達は、妖獣と呼ばれている存在でな。大昔には【使い手】と呼ばれる術が使える獣師がいて、妖獣を従えていた時代もあったってわけだ。分かりやすく言えば【妖獣師】ってところか』