ユリシスが念の為、監視席の足場に置かれているライフルを取り上げ、使用可能であるか確認した。

 氷狼の体表には効かないとはいえ、上手く眼球を狙えば、多少なりともダメージを与えて時間稼ぎは出来る。新しい煙草をくわえたヴァンが、火をつけて一煙吐き出した後、上司に続いてライフルの用意を整えながら、後輩であるサーバルに「おい」と声を掛けた。

「諦めろ。あのガキは、聞く耳を持たないタイプだ」
「まさにその通りですよ。諦めなさい、サーバル」
「ユリシス様、どうしてあの子どもを一人で行かせたんですかッ」

 獣師は、動物の専門家である。彼らは生態を知り尽くしているからこそ、特に害獣に対しては慎重になってくれるはずなのだが、あの少年獣師は、サーバルから見ると恐れ知らずで、どうも危なっかしい気がしてならないのだ。

 ヴァンも同様の見解を覚えてはいたが、上司が決めた事ならと反対はしなかった。とりあえず、最悪の事態を想定して放火銃も用意したが、先月から許可なく外へ降りる事が禁じられていたる現在、この状況を団長のグリセンが知ったら、卒倒するだろうなとは思った。