「君は話を聞いていましたか。氷狼は、日中問わず出てくるんですよ。万が一やってきたら、君の足では到底逃げ切れません」
『臭いがしねぇから大丈夫だ。あいつらに動きがあれば、俺の鼻が察知する』
「今は大丈夫。……ッと獣師の勘が言っている!」

 ユリシスが疑い深い目を細めたので、ラビは慌ててそう付け加えた。

 二人のやりとりを見守っていたサーバルとヴァンが、「やめとけって」「やめた方がいいよ」と口にした。しかし、しばらく考えていたがユリシスが、ふと「いいでしょう」と言った。

「けれど責任は負いませんよ。調査にあたった騎士団の人間が、大怪我をした事だけは肝に命じておいて下さい」

 ラビは小さくガッツポーズすると、早速監視席の方へと向かい、梯子に手を掛けた。

 優しい笑い皺のあるサーバルが、すっかり不安に苛まれた様子で眉尻を下げて「やっぱり危険だよ」と青い顔でラビに説得を試みた。

「一度興奮した氷狼には、威嚇射撃も効かない。いくら剣の腕があると言っても、氷狼は一度に二、三匹でフォーメーションを組んで襲撃してくるし――」
「だいじょーぶだって」

 ラビは梯子に足を掛けながら、目も向けずサーバルの台詞を遮った。サーバルは、ラビの身体がすっかり梯子の向こうに行ってしまうと、「あぁぁぁ」と情けない声を上げた。