「それで? 獣師として何か気付いた事はありますか」
「ん~、まだ特にはないけど……氷狼が、命を落とす事を覚悟で町にやってくる理由ってなんだろうなって、ちょっと考えてた」

 その時、不意にノエルが、ラビの足を尻尾で撫でた。

『気になる事がある。氷狼が辿った道の上を調べてみたいから、とりあえず外に降りてみよう』

 ノエルが顎をくいっと向けた先には、監視席の向こう側にある、外へ降りられる梯子が設置されていた、。

 実際に現場を見た方が、分かる事も多いだろう。なるほどね、とラビはその意見に賛成するように小さく頷き返し、ユリシスへと視線を戻した。

「――あの、ちょっと下に降りてみたいんだけど」

 ノエルに背中を押されながら、ラビは、ユリシスの横顔に尋ねた。途端に彼が「なんですって?」と怪訝な顔を向け、何を言っているんだこの馬鹿は、と秀麗な眉を顰めて露骨に非難の表情を浮かべた。

「だから、氷狼の足跡とか確認してみたいから、ちょっとそこまで降りてみたいんだ」