「きっと大丈夫だって。ちょっと無理に言い聞かせてでも、本邸に戻した方がいいとオレは思うけどな。だってさ、伯爵も最近はあまり帰ってこられないから、すごく寂しがってたよ。王都に行きたいけど、別の事に気がかりがあるみたいで、理由はビアンカにも話――」

 話してくれてないんだよな、と続けようとして、ラビは慌てて口をつぐんだ。

 猫のビアンカは、仔猫時代から可愛がってくれている伯爵夫人を大事にしていた。ラビが別荘を訪問する際に、どうしたら彼女の溜息の数が減るのか相談してくる事も多い。

 しかし、猫から話を聞いているんです、と正直に説明出来るはずもない。

 セドリックが「え、それ本当ですか?」とこちらを覗きこんで来たので、ラビは追及を避けるべく「なんでもないッ」と立ち上がった。それを見た彼が、慌ててラビの腕を掴んで引き止めた。

「ラビ、待って。どうか逃げないで」
「待たない、調査してくるッ」
「えっと……分かりました。その、母上の事を気にしていてくれて、ありがとうございます」

 どうしてか、彼は自分の事のようにはにかんでいた。何が嬉しいのか分からないが、「家族のように大事に見てくれているんですね」と言う。