ラビは、ひとまず水を飲んで落ち着く事にした。その間もずっと、何故か横顔にセドリックの視線を感じた。

 用もなく見られ続けるというのも、なんだか居心地が悪い。何かしら、こちらから話が返ってくるのを待っているのだろうかと考えて、ラビは、横目でそれとなく訊いてみた。

「――そういえば、ルーファスは元気?」
「兄さんなら元気ですよ。今は仕事で忙しくされていますが」

 話しかけただけなのに、セドリックが目を和らげて嬉しそうに微笑んだ。

 セドリックの兄、ルーファス・ヒューガノーズは、十八歳という若さで王宮騎士団をまとめる重役に就き、二十四歳になった今も華々しく活躍し続ける優秀な男だった。

 ラビは四年ほど顔を見る機会がなかったが、ルーファスについては、特に伯爵夫妻から揃って話を聞かされていた。彼の父親である伯爵の話によると「ウチの長男は、出来過ぎる美形で立ち周りも上手い。恐ろしいぐらい男女共にモテにモテて大変なのだ」そうだ。