そう言い返したかったが、ラビは、セドリックとユリシスの存在もあったので黙っていた。

 すると、ラビの心配と気落ちを察したノエルが、小馬鹿にするように顔を上げて得意げに目を細めた。負けず嫌いの彼女の心配気は苛立ちに変わり、ラビは、今すぐその偉そうな顔に両手を押し付けて、揉みくちゃにしてやりたくなった。

「ラビ、何を見ているんです?」

 前触れもなく、眼前にセドリックの顔が現れて、ラビは驚いて目を丸くした。ノエルの姿が、彼の向こうに隠れて見えなってしまう。

 こちらを見つめるセドリックは、どこか少し拗ねたような、面白くなさそうな顔をしていた。

「僕が隣にいるのに、無視しているんですか?」
「……オレ、何か話を振られたの?」

 ラビが困惑しつつ尋ね返すと、隣にいたユリシスが、「別に話は振っていませんが」と珈琲カップを持ち上げた。

 というより、まずはこの並びがおかしいのでは、とラビは腹の中で呟いた。ユリシスとセドリックは、間にラビを挟んで座っているのだ。互いに話したいのであれば、隣同士か向かい側に座ればいいのに、何故自分を挟んでいるのか。