普段から金髪金目への差別等に立たされているというのに、そんな事いちいち気にしていたらきりがないだろう。不要な気遣いだと言わんばかりに、ラビは眉を寄せた。

「オレは売られた喧嘩は買うし、ムカツク奴が出たらまたボコるだけだよ」

 すると、静まり返っていた男達が、途端にざわめき始めた。

「マジかよ、なんて性悪なガキなんだ!」
「俺なんて昨日、頭を足蹴にされたんだぜ。父ちゃんにもされた事ねぇのによ」
「三回空を飛んだ後から、記憶がねぇわ」
「それはあれだよ、心がキレイだからそのまま飛べたって事だろ」

 その時、後ろにあるテーブル席から、一人の男が振り返って「おい」とラビを呼んだ。

「お前獣師なんだろ? これからどうすんだ?」

 その男は、特徴のある顎髭を持っていた。顎鬚の先と目の下に、応急処置の白いテープがされてある。

 ラビは、昨日一番目の勝負で打ち負かした男だったと思い出した。そういえば、彼は三戦目ぐらいで「俺の名前はジンだッ、覚えておけ!」と、半泣きで捨て台詞を吐いて逃げて行った覚えがある。