そこまで考えた時、ユリシスは、隣にいる団長のグリセンが、やけに静かである事に気付いた。

 さすがに団長とあって、目の前で部下達が獣師に負かされた事については、何か感じるところがあったのかもしれない。普段の気の弱さはどうであれば、これでも騎士団については、誰よりも考えてくれている男なのである。

 そう勘繰りながら目を向けたユリシスは、「団長」と掛けようとした声をピタリと途切れさせた。

 胃痛がとうに限界を突破していたグリセンは、立ったまま器用に失神していたのだ。

 ユリシスが沈黙する中、軽やかな風に押されたグリセンの身体が、抵抗もなく後ろへとひっくり返った。

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 騎士団の朝は早い。

 夜明け前の身支度から始まり、ランニングといった体力作りを行う。そして、朝食の時間に間に合うようシャワーを済ませると、決まった時間に地元の料理人が料理を振る舞いに来るのに合わせて、一階の食堂に集まる。

 今日食堂に集まった男達のほとんどは、傷だらけだった。彼らは、いつもの倍を食う勢いで朝食にかぶりついていた。

 誰も喋らず、ひたすら無心で食べ続ける。たびたび、昨日まで食堂にいなかったはずの小さい人物へと、チラチラ目を向ける。団長のグリセンは、胃の調子が悪いといって姿を見せていなかった。

 ラビは、部屋の前で待ち構えていたセドリックに連れられて、定時には食堂へと到着していた。

 食事を受け取って早々、食堂の入口近くのテーブルを独占していたユリシスの隣に座らされ、すぐにセドリックも腰を下ろしてしまったため、二人の間に挟まれる形で腰掛けている。

 食事のメニューは、まさに男の料理だった。野菜が少なめで、山盛りにされた肉料理と白いご飯の組み合わせである。