しばらくして、辺りはようやく静まり返った。

 沈静を迎えた場には、一人の獣師に惨敗し続けた男達の屍が転がっていた。彼らはボコボコにされ、ピクリとも動かなかった。

 参戦せずに寝室から観戦していた数名の男達が、階下の仲間達の無残な姿に青い顔をしていた。その中には、ラビと共にホノワ村から到着した顔ぶれもあり、ヴァンだけが平気な顔で煙草をふかしていた。

「……副団長、これは一体なんですか」

 ようやく、ユリシスが呆気に取られたまま問いかけた。セドリックは、深い溜息をついて額を押さえる。

「彼らがラビを怒らせてしまったんです。ラビは、あの通り体術と剣術には長けていまして……」
「旅疲れが残った状態でアレですか」
「剣術に関しては、兄さんの影響もあると思います。入団するまで、ラビは彼と木刀でやりあっていましたから」
「……それは、総団長の事ですかね? あの人は確か、最年少で総団長に就いた方でしょう。一体幾つの頃の話ですか」
「当時ラビが九歳で、兄さんは十六歳だったかな?」

 とんでもないガキだ。落ち着きも品もない少年だとは常々感じてはいたが、まさかここまでとは、とユリシスは頭が痛くなってきた。

 力比べの木刀戦で、騎士団のほぼ全員がやられるとは情けない結果である。外部に知られてしまったら、第三騎士団のこれまでの経歴や戦力を疑われてしまいかねないだろう。