「――おい、何呑気に座ってんだよ。次の奴、出て来い」

 その一声で強制的に木刀試合が再開され、ラビと男達の一対一の勝負が続いた。

 彼女は突き出された木刀を簡単に叩き落とし、羽のような身軽さで攻撃をかわし、問答無用で相手に木刀を叩き込み、次々と男達を打ち倒していった。時には交わった木刀を滑らせて弾き上げ、軽い身体の跳躍を活かして男の頭を踏み越え、容赦せず背中や腹を狙って打つ。

 次第に男達が「やってやらぁ!」と本気になり、次々に名乗りを上げてラビに挑み、場外で意識を取り戻しては再挑戦する流れが出来た。それは十分もかからずに一対一ではなくなり、ラビ一人に対して、全員で挑むようになっていた。

 広場に、男達の雄叫びと悲鳴が響き渡った。騎士としてのプライドを掛け、めげずに一人の小さな獣師に挑む彼らは、何度も返り討ちに遭い、何度も宙を飛んだ。

 そんな外の騒がしさに気付いて、消灯されていた建物の上階の部屋に灯りが付き始めた。

 先に部屋で休んでいた男達が、「なんだ何だ」と窓から顔を覗かせ、ラビが小さな体一つで仲間達を次々に叩き伏せていく様子を見るなり、「騎士団の威信に掛けてチビを倒そうぜッ」と、事情も知らず面白がって飛び入り参戦した。

 騒ぎを聞きつけたユリシスとグリセンも駆け付けたが、目の前で続く乱闘の激しさに手が出せず、肩を落とすセドリックの隣で、ラビによって部下達が容赦なく負かされていく様子を呆気にとられて見守っているしかなかった。