補佐官がこいつじゃあなぁ、と思わずユリシスを盗み見る。目敏いユリシスが、ラビの視線に気付いて眉間に皺を入れた。
ラビとユリシスの睨み合いが始まると、ピリピリとした雰囲気に気圧されたグリセンが、途端に「ひぃッ」と息を呑んだ。 胃の弱い上司は、険悪な空気に呑まれると、いつも必ず最悪の状況を考えて苦悩するのだ。
それを見て取ったセドリックが、「二人とも止めて下さい」と目頭を押さえた。
「団長、ラビに関しては僕の方でみますので、安心して下さい。空いている部屋を一つ借ります」
「ああ、頼むよ」
グリセンは、頼もしい副団長を見て目を潤ませた。しかし彼は、三人に退出の許可を出してすぐ、恐ろしい事を思い出して震えだし、今にも死にそうな顔でラビ達を見送ったのだった。
1
団長の執務室を出た後、ユリシスが「勤務時間外ですので」と去っていき、ラビはセドリックに警備棟内を案内してもらった。
まず向かったのは、執務室のすぐ上の階にあった、三階の簡易宿泊部屋だった。
ラビがしばらく寝泊まりする部屋は、ベッドと机だけが置かれた小振りな造りをしていた。荷物を置いたラビが、次の場所へ案内を受けるため踵を返すと、ノエルはベッドに飛び乗り『寝る』と告げて横になってしまった。
長い馬車旅は、さすがの彼にも堪えたらしい。ラビは申し訳なく思いながら、セドリックから見えない位置で、おやすみ、の意味を込めて小さく手を振った。ノエルは既に顔を伏せていたが、それに応えるように尻尾だけを数回動かせた。
続いてラビが案内されたのは、一階の食堂だった。時間外なので閉まってはいたが、セドリックは「ここでは決まった時間に食事があります」とさっくりと説明を済ませ、次に二十四時間解放されている休憩の場である広間へとラビを案内した。
ラビとユリシスの睨み合いが始まると、ピリピリとした雰囲気に気圧されたグリセンが、途端に「ひぃッ」と息を呑んだ。 胃の弱い上司は、険悪な空気に呑まれると、いつも必ず最悪の状況を考えて苦悩するのだ。
それを見て取ったセドリックが、「二人とも止めて下さい」と目頭を押さえた。
「団長、ラビに関しては僕の方でみますので、安心して下さい。空いている部屋を一つ借ります」
「ああ、頼むよ」
グリセンは、頼もしい副団長を見て目を潤ませた。しかし彼は、三人に退出の許可を出してすぐ、恐ろしい事を思い出して震えだし、今にも死にそうな顔でラビ達を見送ったのだった。
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団長の執務室を出た後、ユリシスが「勤務時間外ですので」と去っていき、ラビはセドリックに警備棟内を案内してもらった。
まず向かったのは、執務室のすぐ上の階にあった、三階の簡易宿泊部屋だった。
ラビがしばらく寝泊まりする部屋は、ベッドと机だけが置かれた小振りな造りをしていた。荷物を置いたラビが、次の場所へ案内を受けるため踵を返すと、ノエルはベッドに飛び乗り『寝る』と告げて横になってしまった。
長い馬車旅は、さすがの彼にも堪えたらしい。ラビは申し訳なく思いながら、セドリックから見えない位置で、おやすみ、の意味を込めて小さく手を振った。ノエルは既に顔を伏せていたが、それに応えるように尻尾だけを数回動かせた。
続いてラビが案内されたのは、一階の食堂だった。時間外なので閉まってはいたが、セドリックは「ここでは決まった時間に食事があります」とさっくりと説明を済ませ、次に二十四時間解放されている休憩の場である広間へとラビを案内した。