彼は貴族の出身で、閃きや頭脳を信用されているらしい。部下に恵まれているのか、彼の頭脳が発揮されているのか、グリセンが最年少で団長を務めてからは、これまでの任務で失敗もないという。

 時刻は深夜だというのに、ラビ達が到着した時、グリセンはきちんと騎士団の服を着込んで書斎机に腰かけていた。顔色は少し悪く、唇にはやや血の気がない。机の上には書類の束が積まれ、残業をしていたのだと察せた。

「えぇっと……君が獣師の『ラビ』?」

 セドリックから紹介を受けると、グリセンは、困った顔で恐る恐るそう口にした。彼は、セドリック、ユリシス、ラビを順に見て、腹を押さえつつ重い腰を持ち上げた。

「セドリックから話しは聞いていたけど、本当に金色なんだね……。あ、その、僕は別に迷信だとかはあまり信じない方だからアレだけど、ほんと、見事な金髪金目っていうのは始めてか、も……ぅッ」
「具合でも悪いのか?」

 ラビが怪訝な顔で聞くと、グリセンは腹部辺りの服を握りしめ、乾いた笑みを浮かべた。ユリシスが、すかさず「団長に向かって失礼ですよ」と冷たく口を挟む。