『あの爺さん、胸が弱い割りには元気だよな』
「爺さんって言うなよ、ゲンさんは良いお客さんなんだから。父さん達が生きていた頃から贔屓してくれているお医者さんだし、ついでにオレの買い物も頼まれてくれるから、助かってるよ」
『そんな事より、俺は腹が減ったぞ。馬でも食っちまいたいぐらいだ』
「馬を襲うのは駄目だよ。トマトとベーコンがあったから、サンドイッチにしよう」
『焦って皿を割るなよ。お前、おっちょこちょいだからな』

 そこへ、隣町へ牛乳を運ぶ親子の馬車が通り掛かり、嫌なものを見るような目をラビに向けた。怪訝な顔を寄せ合い、「一人で気味の悪い」「悪魔の金色」と囁く。

 ラビは、思わず足を止めてしまった。

 嫌だな、慣れているはずなのに。いちいち気にしていたらきりがないのに、とラビは自身に言い聞かせた。

『あいつら、昔からそうだよな。俺が仕返ししてやろうか?』
「ううん、気味悪がられるのはしょうがないよ。……でも本音を言うと、外でノエルと気軽に話しも出来ないのは、やっぱり嫌だなぁ」