「ヴィルドン地方に、ラオルテという町があります。年の半分以上が雪で覆われるため、氷狼の対策として、大木の防壁で町一帯が囲われています。そこには警備棟という見張り用の高い建物があり、騎士団が定期的に派遣さているのですが、先月頃、町は氷狼の襲撃に遭いました。それからというもの、日中問わず、週に二、三回のペースで、数頭の氷狼が山から下りて来ている状況です」
「でもさ、氷狼に常温は毒だよ」

 ラビが改めて再度指摘すると、ユリシスは「彼らが熱に弱い事は知ってます」と眼鏡を押し上げた。

「しかし、彼らは苦しみながらも町へ侵入しようとする。ほとんど死に掛けながらも、異常な執着心のように喰らい付く事を諦めないのです。銃弾は皮膚に貫通する前に凍りついてしまいますので、剣と放火銃で応戦していますが、彼らは言葉の通り、死ぬまで止まらないのですよ」

 その時、床の上で寝そべっていたノエルが鼻を鳴らした。

『氷獣は、気位の高い賢い生き物だぜ。仲間意識が強いからこそ、自分達の定めたテリトリーの外には出ねぇし、リスクの高い危険は冒さない。戦闘で理性を失うほど馬鹿でもねぇから、死ぬまで止まらないってのも、普通なら有り得ない』

 とすると、常温地への侵入行動と凶暴化は、明らかな異常なのだろう。