そう部下が思案するそばで、セドリックは彼らの会話から、ひとまず強姦や未遂といった間違いは起こらなかったらしいと気付いて、大きく息をついて椅子に座り直した。ひどい疲労感を覚えて、テーブルの上で手を組んで深く項垂れる。

「……ラビ、とにかく旅の件に関しては保留にしておいて下さい。後日にでも、きちんと話し合う時間を作りましょう。僕も休みを取りますから、一度母上も交えたうえで――」
「なんでそこで伯爵夫人が出てくんのさ。この国の法律じゃ、十七歳からは成人扱いだろ」 

 ラビの言葉を聞いたユリシスは、普段の済ました表情を崩し「十七歳!?」と素っ頓狂な声を上げてしまった。彼はラビの事を、てっきり十五歳そこそこだと思っていたので、なんて品のない子供っぽい男なんだと冷や汗まで覚えた。

 彼らの事情はよく知らないが、ユリシスは、悲壮感を漂わせる副団長が可哀相にも思えて、「今回の氷狼の件ですが」とこちらで話を始める事にした。