ラビは口に含んだお茶を、もう少しで噴き出すところだった。

 こいつは急に何言ってんだと思ったが、ひとまずセドリックから問い掛けられた言葉を、もう一度頭の中で反芻してみた。

 僕がいない間に何かひどい事をされたか、だと?

 ラビは自分の発言を振り返ってみたが、勘違いされるような物言いをした覚えもなく、彼がどう考えてその推測に辿り着いたのか見当がつかなかった。

 そもそも、ひどい事、に当てはまるような出来事も思い浮かばない。『忌み子』扱いの中傷は普段からの事であるし、かといって、直接暴言を吐かれたり暴力を受けた訳ではないので、『ひどい事』にはあてはまらないだろう。

 旅については、本当に前々から考えていた事だ。

 何かあったから早急に村を出たい、という軽い気持ちではなく、これはラビの夢である。以前から考えていたというだけでは、理由が弱いのだろうか?

 どうすれば説得出来るのかと言葉を探している間にも、セドリックがテーブルに両手をついて、身を乗り出して続けて尋ねてきた。