ラビは、彼の頭を撫でながら「そんな事言うなよ」と眉を顰めた。

「驚かれるのも怖がれるのも、原因はオレだからいい気がしないんだよ。だって、ノエルの姿は他の人に見えないじゃんッ」
『俺を普通の狼と一緒にすんなよな。まぁいいさ。俺は、お前だけが見えていれば、それでいい』

 黒大狼のノエルは、寂しさも見せずに満足げに言いながら、ラビの脇腹に頭を擦り寄せた。

『なんで人間は、お前を怖れて嫌うんだろうな。その髪も目も、俺は好きだぞ』
「――ありがと。オレも、ノエルの事が大好きだよ」

 朝の太陽の日差しに透けたラビの金色の髪が、繊細な絹のように輝いた。少し長く伸ばされた前髪から覗く大きな瞳も、影を作る扇のような睫毛も全て金色である。

「さて。頼まれていた薬草分を準備しておこうか。ゲンさんは隣町だから、いつも通り昼頃までには来店すると思うし」

 ラビは、家の玄関に向かって歩き出した。

 家の敷地は、小さな庭畑まで低く白い柵に囲われている。手に籠を持ったラビに配慮し、ノエルが先回りして、柵の扉を鼻で押し開けた。