「あなたは何を考えているんですか。いくら喧嘩が強いからって、……いえ、確かに剣の腕もそれなりにありますけど、だからといって無謀ですよ。害獣の他に山賊もいて、特にこの時期は被害が多いんです。何も、このタイミングで出て行かなくても――」
「だから、以前からずっと考えてたんだってば」

 ラビは鬱陶しくなって、幼馴染の言葉を強く遮った。

「獣師の勉強がてら、いろんな土地を渡るのだって悪くないだろ。オレはずっと独学で――……それに、ここに閉じこもっているよりは、ずっと面白いと思う」

 思わず本音をこぼすと、セドリックが急に真面目な顔で考え始めた。ようやく納得してくれただろうかと思いながら、ラビは喉の渇きを覚えてコップを持ち上げた。

 セドリックがふと、血の気を引かせた面持ちを彼女へと向けてこう言った。

「――まさか。僕がいない間に、誰かに何かひどい事をされたんですか……?」

 何故か心配するような声で、全く予想もしてないかった問い掛けをされた。