どうして、誰も彼が見えないのだろうかと、不思議になる光景だ。

 ノエルはここに寝そべっていて、ラビの目にはハッキリと映るのに、こうして同じテーブル席に腰かけているセドリックとユリシスには見えていないのだ。つまり彼らの世界に、ラビの友達は存在していないのと変わらない。

「――ちょっと、旅に出ようと思って……そろそろいい加減、もういいかなって」

 みんなには秘密の、大事な友達。

 生まれて初めてラビの友達になってくれて、この金の髪や目を好きだと言ってくれたのが、ノエルだった。

 ノエルから話を聞かされるたび、ラビは、いつか自分の目でホノワ村の外を見てみたいと憧れた。だから、いつか一緒に、人の目も気にせず旅に出る事を夢にみていた。

「『もういいかな』とは、どういう事ですか?」

 ひんやりとした声に、ラビはハッとして我に返った。

 つい口が滑ったと後悔したが、セドリックの探るような眼差しは更に鋭くなっており、誤魔化すのは難しそうだった。セドリックは昔から、世話焼きで心配性という面倒な性格をしているのだ。