「勝手に見るな、触るな、眺めるなッ」
「だって暇なんですよ。副団長も、私も」
「くっそ、この自由人どもがッ。そっちの話は一旦聞くつもりだけど、もてなした覚えはないんだから、嫌ならとっとと帰ればいいじゃん」

 反論したユリシスを睨み返したラビは、その時、不意にセドリックに腕を掴まれて、片手に取り返した地図をあっさりと奪われた。

 ラビが驚いて振り返ると、そこには、冷静ながらも強い眼差しをしたセドリックがいた。

「ラビ、答えて下さい。この大量の地図や、バツ印はなんですか? あなたの仕事に地図が必要だなんて聞いた事がありません」

 いつになく真剣な眼差しに、ラビはたじろいだ。掴まれた腕の力強さから、話すまで解放しないという空気も感じて戸惑う。

「……印は、印だよ。聞いたって面白くないよ」

 そう弱々しく反論しつつも、ラビは促す彼の腕に逆らえず、余っていた椅子の一つに腰かけた。

 セドリックの力が弱まったので、手を振り払って、自分の分として用意していたお茶を口にした。すぐそばでノエルの尻尾が振れている様子に気付いて目を向けると、彼の長く大きな尻尾が左右にゆっくりと振れて、その柔らかそうな毛並みが動いた。