ラビは、強烈な苛立ちを覚えた。せっかく当月中に仕事を終わらせようとしているにも関わらず、ここで数日、へたしたら一週間は超えるであろう予定なんて組まされたりしたら、薬草師としての仕事が来月まで引き延ばされてしまう。

 予想以上のラビの怒気に気付いたセドリックが、「ひッ」と息を呑んだ。しかし、ユリシスが彼の前に出て、冷やかな表情でラビと睨み合った。

「同行して下さいますね?」
「オレは絶対に行かない。だから、話も聞かない事にする」

 その様子を見守っていたノエルが、『まぁ、突然の出張とかはないよなぁ』とラビを憐れみ、ビアンカが小さな溜息をこぼした。

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 伯爵夫人に、ビアンカの件が解決したと手短に挨拶を済ませた後、ラビは、セドリックとユリシスに「オレは仕事が残ってるから帰るッ」と告げて別荘を出た。

 玄関にたむろする騎士達と鉢合わせしたが、驚くその三人を睨みつけて道を開けさせた。朝に収集した薬草の一つに関しては、加工作業が残っていたので、手っ取り早く済ませて、少し休もうと考えていたのだが――


 何故かセドリックとユリシスがついて来たうえ、断りもなく家に上がってきた。


 小さな家は、奥に寝室への続き扉を置いて、キッチンと食卓と作業台が一つのスペースに詰められたような間取りをしていた。足場の踏み所を狭めるように、辺りには本やノートが積み重ねられている。